結婚を来月に控え、私の心は幸せだった。これからの生活の一抹の不安も無視できるほどに。様々な経験をした私はいつの間にかそこまで強くなっていた。

それは幸福を素直に受け入れられる心。

 

久々に両親と食事に出かけた。

父からは優しさの中に寂しさを感じた。

母の表情は祝福で輝いていた。

その胸元には上品に揺れるネックレス。

昔から母が好きな石が静かにきらめく。

独身の頃手に入れたお気に入りのジュエリーだという。

大切な石に守られて二人は出会い、その幸せは私へとつながった。

 

その翌日ネックレスを買った。

独身最後のジュエリー。

プレゼントではない自分自身との約束。

心に刻む感謝と幸福の形。

そこには私の好きな石がそっと揺れ、やわらかくきらめいてる。

今までの自分とこれからの自分。

そのジュエリーは時をつないでくれる。