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30歳の記念

ピアスと私

30歳の誕生日の夜、母に電話をした。

その優しい声は大人になった私を子供にさせる。

心に淡く映る、10代の懐かしさ、20代の思い出。

喜びの風景と暗い時代。

経験は私を成長させると同時に未熟な自分を感じさせた。

そして30代。

単なる数字の変化。

私はその数字に幸せを祈る。

 

部屋に薔薇を飾り、静かに音楽を流す。

優雅な香りと音色が交錯する。

学生の時開けたピアスの穴に触れ、意識に現れた鮮明な記憶を撫でる。

はじめて買ったピアス──甘い夢を眺めていた日々。

当時の恋人に貰ったピアス──ジュエリーを着けるしぐさが好き、とその人は言った。

辛い時に求めたピアス──乗り越えた自分がいる。

その穴はひとつの私の歴史。

そしてまた新しく買ったピアスを身につける。

これからの喜びと幸せのため。

小さなサナギは華やかな蝶になることを求めて。

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