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  • 執筆者の写真Kyohei Hayakawa

《一角獣の薔薇》【薔薇のネックレス】



《一角獣の薔薇》

幻想の森の静寂

その薔薇は銀色の一角獣が歩いたあとに咲く

穏やかな香りの中の冷たさと温もり

無邪気な幸福


少女はやがて薔薇の棘を恐れるようになる

夢の否定

想像の世界は失われ、美しい森は忘れられた


大人になった少女は時の海に流される

唐草は曲線を描き続け、喜びと悲しみを繰り返す

光と影 その狭間

痛みを感じるたびに問う

──私は、誰?──


彼女は寂しさの中で夢を見た

それは優しい記憶

深い緑に包まれた自分と、一角獣

銀色の体にそっと触れ、幼い日々を思い出す

甘美な幻 信じる心 美しい涙

──世界の輝きの中で、私は私の物語を紡いでゆく──

彼女の心が震えると、一角獣は淡い光を放ち、ゆっくりと消えた

残ったのは懐かしい薔薇

穏やかな香りの中の冷たさと温もり

そして無邪気な幸福

もう棘を恐れることはない


うつろう時の中で美しい記憶はいつまでも輝き

その薔薇に触れるたびに私は美しさを取り戻す

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