Kyohei Hayakawa
中原淳一 色鮮やかな夢

昭和に活躍した画家、中原淳一。
人形作家として美への才能を開花させたのち、イラストレーター、デザイナーとして人気を博し、マルチ・アーティストとしてさまざまな美を生み出します。
戦後間もなく自身の雑誌『それいゆ』『ひまわり』などを創刊。
誰もが取り入れられる美しい生活、洗練されたオシャレなファッションなどが掲載された雑誌は、女性や子供たちに深く愛され、人々に華やかな夢を与えました。
彼の示した可愛らしさと美しさは、現代の女性たちも魅了しています。
私は作品も好きなのですが、最も敬愛するところは、戦争が終わり何もない灰色の時代に色鮮やかな世界を生み出し、夢を失っていた女性たちに美しい希望を与えたことです。
人にとって、女性にとって、美しいものがいかに大切かを伝えた芸術家でした。
晩年彼の書いた『もしこの世の中に』という詩は、人としての豊かな生き方を教えてくれます。
もしこの世の中に、風にゆれる『花』がなかったら、
人の心はもっともっと、荒んでいたかもしれない。
もしこの世の中に『色』がなかったら、
人々の人生観まで変わっていたかもしれない。
もしこの世の中に『信じる』ことがなかったら、
一日として安心してはいられない。
もしこの世の中に『思いやり』がなかったら、
淋しくて、とても生きてはいられない。
もしこの世の中に『小鳥』が歌わなかったら、
人は微笑むことを知らなかったかもしれない。
もしこの世の中に『音楽』がなかったら、
このけわしい現実から逃れられる時間がなかっただろう。
もしこの世の中に『詩』がなかったら、
人は美しい言葉も知らないまま死んでゆく。
もしこの世の中に『愛する心』がなかったら、
人間はだれもが孤独です。
中原淳一