Kyohei Hayakawa
映画『ハウス・オブ・グッチ』

映画『ハウス・オブ・グッチ』鑑賞。
世界的ブランド「グッチ」の華麗なる創業者一族。
その成功の裏にあった家族間での争い、そして殺人事件にまで発展した真実を描く。
「グッチ王朝」の権力を握るため、それぞれの人物の想いが衝突していく物語に引き込まれます。
それは単なるお金のためだけでもあれば、ファッションへの愛、守るべきイタリアの伝統、家族の幸福、さまざまな理想のためでもあります。
個人的にはどの人物にも感情移入することができ、そこに生まれる複雑で興味深い人間のドラマに魅了されました。
その複雑な感情はレディー・ガガ演じるパトリツィアに特に集約されています。
全てを手に入れようとする激しい野心によって身を滅ぼしていく人生。
そこには欲望に忠実な人間のたくましさと幸福から離れていく儚さを感じます。
もちろんファッション映画としても十分に堪能できる作品。
終始華やかでゴージャスなレディー・ガガ。
鮮やかなファッションとイタリアン・ジュエリーで、太陽のように輝く女性の強さと美しさを表しています。
はじめは周りを幸福にさせるような大輪の華のような存在から、徐々に人間の醜さが生まれていく流れの中、その服も段々と虚飾的に見えてくるよう。
ファッションと人の心との関係性に、不思議な面白さも感じられます。
出演者も豪華で、その演技も素晴らしい。
各人物の心のドラマは、不完全であるがゆえの人間の魅力を伝えます。
その繊細さと強さに揺れながら運命に翻弄されていく、アダム・ドライバー演じるパトリツィオ。
才能の幻想によって悲しく堕ちていく、ジャレッド・レト演じるパオロ。
自分の中に数多く存在する小さなキャラクターたちを見ているようで、切なさと愛らしさを感じました。
ラグジュアリーな空気の中、交錯する人間の醜さと美しさを見ることができる映画です。