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  • 執筆者の写真Kyohei Hayakawa


レンブラント《自画像》1629年頃


あらゆる色彩を包み込む黒。

時に死の色として忌み嫌われ、時に絶対的な美の色ともされます。



宝石は鮮やかな色彩と輝きを楽しむものですが、黒い宝石というものも存在します。

ブラック・ダイヤモンド、ブラック・スピネル、オニキスといった宝石は黒の美しさを表し、強い魅力を感じる方も多くいらっしゃいます。

ジェットと呼ばれる石はアンティークジュエリーでも見ることができ、亡くなった人への愛を表現する「モーニングジュエリー」という装飾品に多く使われました。



ココ・シャネル


ファッションでは元々タブーであった黒に美を見出したのはココシャネルであり、コムデギャルソンやヨウジヤマモトでした。


シャネルは「たくさんの色を使えば使うほど醜くなるということを、女たちは気づかない」と語り、「黒はすべての色に勝る」という哲学を持っていました。

その強い美意識からシックな「リトルブラックドレス」を生み出し、世界に新たな美を伝えました。


日本を代表するブランドであるコムデギャルソンとヨウジヤマモトは1981年のパリ・コレクションで共にデビュー。

その作品はどちらも黒一色で、穴も開き、アシンメトリーという当時の常識では考えられないスタイルでした。

それは「黒の衝撃」と評され、その後のファッションに大きな影響を与えました。



ビアズリー《サヴォイ》

ルドン《眼=気球》


美術の世界でも黒は私たちに圧倒的な美を見せてくれます。

カラヴァッジオ、レンブラント、ゴヤ、ビアズリー、ルドン。

画家たちの描く黒は、光の輝きを伝えるための重要な色であり、官能と耽美の象徴であり、幻想的な世界の表現でもありました。



カラヴァッジョ《聖マタイの召命》


"死は生の対極としてではなく、その一部として存在している"


これは村上春樹さんの小説『ノルウェイの森』の一節ですが、黒という色の美はこの言葉で表現することもできます。

私は黒に美しい生への希望も見出します。


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