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  • 執筆者の写真Kyohei Hayakawa

My Story 映画



小さい頃を思い返すと、映画は大きな楽しみであり、幸福な記憶でもある。

週末にテレビ放映される映画。

父と一緒に行ったレンタルビデオ店。

母に連れていってもらった映画館。

アニメ映画や洋画のファンタジー作品は、子供の自分にとって輝く夢の世界であった。




大学へ入り、文学や美術に関心を持つと同時に、映画にも心酔するようになる。


私の大学では週に一回体育の授業のため、片道2時間近くかかる西東京のキャンパスへ行かなくてはならなかった。

学校の授業に熱意を持てなくなった自分は、ふと途中の新宿駅で降り、そのままふらりと映画館へ行ってしまった。

堕落的な感覚と映画の世界への逃避を覚えた時間。


やがて学校へ行っても授業に出ず、毎日校内のAVライブラリーで映画を鑑賞するようになった。

映画史や世界の名作を紹介する本を手に入れ、載っている映画を全て見ようと、一日2〜3本は観るようにして、映画漬けの日々を送った。

『市民ケーン』や『天井桟敷の人々』といったクラシック。

『ゴッド・ファーザー』や『2001年宇宙の旅』などの金字塔的映画。

黒澤明、小津安二郎、溝口健二たちによる黄金期の日本映画。

偉大な映画芸術は私の感性を形成していった。




映画は心を救済する芸術でもある。

私にとっての大切な映画は、フェデリコ・フェリーニ監督の『カビリアの夜』。


貧しくも明るく生きる娼婦カビリアは幸せな生活を夢見るが、男たちに幾度も裏切られ絶望する。

ラストシーン、彼女はそれでも絶望から立ち上がる。

何か希望を見つけたわけでもない。

助けを得たわけでもない。

ただ立ち上がり、そして彼女は微笑む。


私はそのシーンに人間の純粋な強さと美しさを感じ、心が震え涙した。

その微笑みによって魂が救済されることを強く感じた。

それは私の映画体験の中での美しい記憶である。




古い映画を観るのが好きだ。

クラシック作品により、時を超えてロマンティックな夢の世界に触れられる。

マレーネ・ディートリッヒ、グレース・ケリー、オードリー・ヘップバーン。

独自のエレガンスと華やかな高貴を生きた偉大な女優たち。

原節子、田中絹代、高峰秀子。

涼やかな気品と強く生きる美しさを教えてくれた日本の名女優たち。


映画は常に夢を与え、優美な幸福をもたらしてくれる。

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