Kyohei Hayakawa
My Story 絵画
更新日:2022年2月17日

はじめて絵画に心を動かされた記憶。
それは小さい頃に何かの本で見たルノワールの『イレーヌ・カーン・ダンヴェール嬢』であった。
あまりにも有名で人気のある絵画に今では恥ずかしさも覚えるが、無垢な子供であった私はその美しさに素直に感動した。
豊かにきらめく長い髪、柔らかくも強いその涼やかな表情。
その気品と幸福感の漂う世界には今でも魅了される。
ロマンティックな乙女を描くイラストレーターの高橋真琴さん。その作品への原体験は、外国人の美しい少女と出会ったことにあると本で読んだことがある。
子供の時の小さな美への感動から、あの華やかな夢の世界は生まれている。
それを思うと、ただ美しいものに憧れ続け今はジュエリーを仕事にしている私も、ルノワールの描いた少女によって美への想いが芽生えたのかもしれない。
10代後半になるとアンディ・ウォーホールのアートに惹かれるようになる。
クール、シニカル、ポップ。
そして死を分かりやすくアートで表現したことに、青年特有の悩みを持つ私は救われたような気がした。
ウォーホールからバスキア、キース・ヘリング、現代アートへと興味は広がった。
19歳の時、初めての海外でニューヨークを旅したことも、アートへの強い憧れのためであった。
その時はニューヨークに1ヶ月間滞在し、MoMAやメトロポリタン美術館、ソーホーのアートギャラリーなどをひたすら観てまわった。
ピカソ、マティス、モディリアーニなどの近代美術の名画。
理解し難い現代アートの面白さ。
そしてウォーホールやバスキアの生の作品をニューヨークの空気の中で観る喜び。
それは若い私にとって刺激的な芸術体験となった。

海外の名画を直接この目で観たいという欲望から、20代の時には世界中の美術館を訪れた。
北米、ヨーロッパ、アジアをまわり、有名な作品をただひたすらに吸収した時代。
レオナルド・ダ・ヴィンチの『モナリザ』、クリムトの『接吻』、ピカソの『ゲルニカ』。
歴史的な名画に魂が揺さぶられ、深い感動を覚えた。

世界の芸術を求めた旅は、美しい断片として私の美意識を形成している。
アメリカのワシントン。自分の心が苦しい時に触れた、ゴッホの『自画像』。
その作品からは、苦悩を乗り越える、強く美しい輝きを感じた。
「美は魂を救済する」
旅での体験は私にひとつの真理を伝えた。
この真理は今私自身が創作をする際にも、強く想うものある。

私は常に肖像画に惹かれる。特に女性の美を描く作品に、自分の求める理想を見出す。
竹久夢二、高畠華宵、中原淳一。
大正〜昭和の叙情を描き、詩的な女性美を表現した芸術家たち。
耽美的な作風で知られる金子國義さんも好きな画家。
高級感の中に遊び心とエロティシズムが存在し、独特な美しさを感じさせる。
彼らの描く女性は、優雅で華やかな夢を与えてくれる。
女性をもっと美しくしたい。
人生を優雅に楽しむ女性を増やしたい。
そこから世界を華やかにする美しさが生まれる。
その強い想いは画家もジュエリーデザイナーも同じである。